Exercise

2023.08.08

福内櫻子さんに聞く、ライフスタイルに合わせたランニングの楽しみ方。

学生時代は長距離アスリートとして活躍し、現在はランニングトレーナー・モデルとして活動する福内櫻子さん。走る楽しさを伝える活動を始めようと思ったきっかけ、ランニングが習慣化することで起こる変化、また、ストレスを手放すために意識していることなどを伺いました。

スポーツの世界の架け橋になりたかった

―ランニングトレーナーになったきっかけは何でしたか?

幼い頃から長距離走が得意で、学生時代は陸上に打ち込みました。大学卒業と同時に競技からは引退し、有名スポーツブランドに就職しましたが、やはり「走ることを仕事にしたい」という想いが大きくなり、独立しました。

近年は女性の市民ランナーも増えつつありますが、私が現役時代はまだ少なく、一般のマラソン大会に出場するのはほとんどが男性。「陸上=男性がするスポーツ」というイメージがいまだ根強いと感じます。私にできることは何だろうと考えた時に、走る楽しみをもっとたくさんの人に、特に同世代の女性に伝えることだと思いました。ヨガのように、同世代の女性が楽しんでランニングに取り組んでいる姿を見たら、興味を持ってくれるかもしれないと。

ただ、興味を持って始めても継続が難しい。半年以上続けられる人は約3割と言われています。ランニングアドバイザーというと、速く走れるようになるとか長距離を走れるよう指導する人が多いですが、日本にいる市民ランナーの9割は健康や美容のために走っている人。だったら、楽しみながら無理なく続けられるコツを伝えるトレーナーになろうと思いました。

また、教えるだけではなく、ランニングの魅力を伝える工夫もしています。SNSの投稿はファッションや旅などランニングのあるライフスタイル全般を発信。そうすることで、「生活の中に走る習慣がある」というイメージを持ってもらいやすい。SNSをきっかけに私が主催するランニングコミュニティに同世代の女性も参加してくれるようになりました。

―福内さんはランニングランナーとしてだけではなく、モデルとしてもご活動されていますね。

実は現役時代、自分が陸上選手であることを隠していたんです。「陸上=男っぽい」と思われていたからです。でも、スポーツブランドに勤めていた時、世界には女性アスリート選手が想像以上にたくさんいることを知り、そして、みんな堂々としてかっこよかったんです。中にはブランドのアンバサダーを務めていたり、プロのモデルとして活動している人もいました。当時、日本の女性アスリート選手が前に出ることはあまりなかったように感じたので、自分が表に出ることで「スポーツをする女性=かっこいい」と感じてもらえたらと思いました。

一方で日本のファッション雑誌を見ると、華奢で肌が白いモデルさんがほとんどだったことにも違和感を持ちました。そういう人しか誌面にいなかったら、美の基準が画一化されてしまう。日焼けして、アクティブにスポーツを楽しむ女性がモデルの世界にいたら、いろんな“美”があることが伝えられるかなと思い、モデル活動を始めたんです。

ランニングが習慣化すると人生が輝きだす

―ランニングを生活の一部に取り入れるとどんな良いことがあると思いますか?

私のコミュニティメンバーは「人生が楽しくなった」と言ってくださる方が多いです。実際に有酸素運動をすると脳が活性化して、マインドがポジティブになると言われています。ランニングはたしかにきついですし、自分と戦わないといけない。でも、「走りたくない」という気持ちに打ち克って走りに行くと「やっぱり走ってよかった」と必ず思います。それを繰り返すと、自信がつく。ランニングコミュニティでいろんな人に出会ったことで、価値観が変わったという人もいます。ランニングが習慣化すると考え方も見た目も変わっていくのを実感できると思います。毎日ダラダラ過ごしてしまう自分が嫌だなと思う人には「一緒にランニングに行こうよ!」と誘いたくなります。

―福内さんも走りたくない日はありますか?

もちろん!(笑)。寒いのが苦手なので、冬は走るのが億劫になりますし、生理中など体調的にきつい日もあります。そういう時は無理に走りません。でも、なんとなく走りたくないなというくらいだったら、ウェアを着て外に出るようにしています。すると、自然と走りたくなるんです。

続けるコツはとことんハードルを下げること

―「ランニングを続けられる人は約3割」ということでしたが、続けるにはどうしたらいいでしょうか?

日本人は頑張り屋さんが多いので、「毎日続けよう」とか、「○○km以上走らないと」と思い込んでいる人が多いんですね。でも、速いペースで走ったり、長距離を走るよりも、続けることのほうが大事。週1、2日でもいいですし、短い距離でもいい。そういうふうに考えて、無理しない人が続けられる人だと思います。

そして、目的が明確にあることもモチベーションにつながります。辛いことを我慢することがランニングの目的ではありません。体力をつけたいとか、体型を変えたいとか、なりたい自分に近づくためのツールだと思ってもらえたら。気分が乗らなければ、10分だけ体を動かそう、というくらいの気持ちで走りに行く。自分の中のハードルをとことん下げてあげると意外と走れます。その繰り返しが人を強くする。みんな最初からハードルを上げてしまっているから苦しくなってしまうと思います。

―たしかに。昨日よりも速くとか、長い距離が走れるようになろうとか、数字にとらわれがちです。

私も大会に出る予定があればペースは気にしますが、普通に走るだけだったら時計は持たないです。気持ちいいリズムでいつものコースを走って終わり。距離もペースも気にしません。それぐらいの軽い気持ちだったら今すぐ走りに行けると思います。

また、走っている時は脳が活性化するのでいい言葉やアイデアが浮かんだりするんです。仕事に行き詰まった時や心がモヤモヤしている時は、走りに行って気持ちを切り替えることも。悩みがなくなるわけではないですが、走っている間は悩みを忘れられて「別にいいか!」と思えます。

―福内さんが今後やりたいことはありますか?

女性アスリートが直面する女性特有の体の問題に取り組んでいきたいです。というのも、私は現役時代、生理が年に2回ぐらいしか来なくて、それが当たり前だと思っていたんです。生理に正常な周期があることも知らず、問題の深刻さに気づいてすらいませんでした。監督やコーチは男性が多かったので生理になったことも言い辛く、正しい情報を得られる環境がありませんでした。また、生理中は体が重く感じて、太ったと勘違いして、過度なダイエットをしたこともあります。
そういう間違った思い込みや情報にとらわれて、自分の体にきちんと向き合えていませんでした。だから、私のような女性アスリートを一人でも減らしたい。以前、一般の女性と話していて「女性アスリートってそんな過酷な状況で競技に取り組んでいるの?」と驚かれたことがあります。だから、私が積極的に発信していくことで、アスリートたちが正しい情報にアクセスでき、自分の健康問題ときちんと向き合える環境を作っていきたいです。

心地よい生活はストレスを手放すことから

―仕事柄、オンの時はアクティブに動かれていますが、オフの日はどんなことをしていますか?

自然を感じるのが好きなので、緑が多いところに行くようにしています。近場の公園や遠くの神社に行くと、ストレスを吸い取ってくれる気がするんです。

そして、オン・オフに関わらず、日頃大事にしているのは、目に見えるものをなるべく自分の好きなものにすること。全部は無理でもなるべく自分の気持ちが上がるものを選びたい。SNSもそうですね。見たくない情報を見てストレスを感じたくないので思い切ってオフにします。

ストレスを感じると、“自分へのご褒美”として買い物をしたり、高級レストランに行ったりする人も多いですが、ストレスの元凶となるものを除いていくことが大事だと思います。「なんだか違うな」と思うものを持たない、使わない、目にしない。そういうこともストレスを手放すきっかけになります。私はアスレティアの「コアバランス オイル」と「トーニングローション」が好きなのですが、それは使うたびに心地がいいから。「いい香りだな」と思うだけでも気持ちが上向きになる。そういう瞬間が日常に増えていけば、幸せを感じやすくなります。自分で変えられることは変えていく。何気ない小さなことでも気持ちのいい環境にすることが大事だなと思います。

  • Text/Mariko Uramoto
  • Photo/Yui Sakai
  • Edit/Riku

プロフィール

福内櫻子

関東大学陸上選手権5000メートル3連覇、10000mで2連覇、全日本大学駅伝準優勝など、長距離走のトッププランナーとして数々の実績を残す。大学卒業とともに現役を引退し、スポーツメーカーへ就職。その後、独立し、ランニングイベントでのコーチングやモデルとして活動中。

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