Inspiration

2023.04.10

“当たり前”を疑って自由になれる。青柳文子さんが旅を続ける理由

単調な日々から抜け出して、美しい光景に息を呑んだり、その土地の食材を味わうなど、旅の楽しみはさまざまありますが、そもそも人はどうして旅に出続けるのでしょう?これまでアジアやヨーロッパを中心に約20カ国を訪れ、最近はお子さん二人を連れて短期移住を積極的に行っている俳優・モデルの青柳文子さんに旅の魅力、知らない土地に暮らして見えてくるものについて教えてもらいました。

旅に行けるチャンスは結構限られている

―旅が好きになったきっかけはなんですか?

子供の頃、地球儀を眺めては、遠く離れた国の景色や、そこに住んでいる人のことを想像するのが好きでした。
日々、メディアを通じて情報だけは入ってくるものの、気づけば目の前のことで手がいっぱいで大人になり、どんどん時間だけは過ぎてゆき、ある時人生を逆算したら、早く行かないとすべて回るには全然時間が足りないし、自由に動けるチャンスって結構限られているかも、とハッとしたんです。それが23、4歳ぐらい。そこからまとまったお休みが取れる仕事のスタイルに切り替え、旅を重ねるようになりました。

―お子さんが産まれてからは、デンマークやスウェーデンなどへ長期間行かれていたとか。

はい。この先ずっと東京という大都会で子育てするよりも、自然豊かでリラックスした環境で生活したいと思い始め、最近は移住も視野に入れて旅しています。子連れの旅だと、それなりにお金もかかるし体力も消耗するので、せっかく時間をかけて行くなら、長期間滞在した方が子どもの負担もかからなくていいなと。短期だとどうしても「あそこに行かなきゃ!」と焦ってしまいますし、事前に計画を立てても、子供の体調や気分で行けなくなることもある。それでヤキモキするよりは、何も決めずにその日の気候や気分で過ごせる方が私も子どももあまりストレスがない。子供2人を連れてのロングフライトは大変ではありますが、幼少期の柔らかな感受性は今だけのものだし、義務教育が始まると長期で旅に行きにくくなるので、今のうちに!と思って行っています。

青柳さんがスウェーデン滞在で撮影した一枚。

環境に対する意識や生き方の違いを目の当たりに。

―行く場所はどうやって決めていますか?

人がごった返している有名な観光地よりも、美しい風景や現地の人の暮らしが見たいので、自然豊かな国で、わりと田舎の方に行くことが多いです。最近だと、北欧の国々は、社会制度にも興味があったし、いわゆる”北欧デザイン”がどんな風に暮らしに息づいているのか見たくて行ってきました。本当にあらゆる所までデザインが行き届いていて、ため息が出るほど綺麗な街並みで、歩いているだけでも気持ちがよかったです。

―これまで訪ねた場所の中で印象的だったところはどこでしょうか?

それぞれの土地でいろんな影響を受けていますが、ドイツのミュンヘン、アメリカのポートランドは、初めて観光でなく「暮らしを見に行く」ということを目的にした旅だったので特に印象が強いです。

―たとえばどんなことが印象的でしたか?

ミュンヘンでは環境に対する意識の違いを実感しました。一般のスーパーでもオーガニック商品が多いですし、使い捨ての商品はほとんどない。飲み終えた瓶をお店に持っていくとキャッシュバックされるデポジット制も根付いていました。ポートランドは、クラフトマンシップやDIY精神を大切にしている人が多く、センスの良い人にも沢山出会う事ができ、町の雰囲気もリラックスしていて、羨ましく思いました。

北欧の国々はあちこちにリサイクルボックスが置かれていて、ゴミになるものがあまりないんですよね。そう考えると、日本はプラスチック製品で溢れかえっているし、包装も過剰。海外に行くと日本のエコ意識の低さを痛感させられます。また、街中にDIYショップがたくさんあって、自分の手で作ったり、壊れたら直して使うという意識が広がっていると気づきました。家族との時間を大事にしている人も多く、14時くらいに仕事を終わらせて、子供やパートナーと公園で待ち合わせして一緒に遊んでから家に帰るという人もいて驚きました。それで社会が回っているのもすごいなと。

そういえば、スウェーデンでは洋服屋さんの片隅に子どもの落書きコーナーがあって、そこには「戦争反対」、「地球温暖化を止めよう」「LOVE YOURSELF」といったメッセージが書かれていて、子供もこんなに考えているんだと驚かされたことも。

旅の醍醐味は自分の当たり前を疑えること

―旅先でいろんな発見をされている青柳さんですが、旅に行き続ける理由はなんでしょうか?

自分の当たり前を疑えるから、でしょうか。たとえば、インドでは、現地の人と約束しても、平気で遅れてきたり、嘘もよくつかれて(笑)、自分の常識が通用しなくて大変でしたが、人懐こくて悪びれない、憎めない人達との交流で価値観を揺さぶられました。日本で過ごしていると、無意識に固定観念やルールに縛られていて「こうでなきゃ」と思い込み、生きづらさを感じる時があります。旅に出ることで「自分の当たり前が当たり前ではないと気づけて、自由になれる」それはすごくいいことだなと思います。

また、トルコやモロッコなどイスラム教の国に行った時も同じことを感じました。現地の方と話していると、育ってきた環境や文化、信仰する宗教が違うとこうも考え方に差が出るのかと改めて感じました。それを「いい・悪い」でジャッジするのではなく、その人をそのまま受け入れられる。それはなぜかというと、旅先では自分がフラットになれるからだと思います。お互いが相手に対して変な先入観がないので取り繕う必要がないし、その状態で話して感じることってすごくピュアだと思うんですよ。そういう原始的な感覚を味わえる感じができるのも旅の楽しさですね。

―現地の人とはよく話されますか?

そうですね。Airbnbを使って一般の家庭の一室をお借りすると、そのおうちの方と話せますし、インドや中東では街を歩いているととにかくいろんな人が話かけてくる(笑)。日本で知らない人に話しかけられたらびっくりするけれど、外国だったらそういうものなんだなとこちらも壁を作らずに話ができます。

そう考えると、バックグラウンドが自分と違うとわかっている人だったら受け入れられることも、同じ日本人というだけで、受け入れられないことが、おかしいなと思えるんです。日本人でも相手が自分と考えや価値観が同じなわけがないのに、なぜか近しいものだとつい決めつけて、期待と違うことをされると許せなかったり、悲しくなったりする。旅に出ると、そういうことに気づいて反省します。逆に日本人は安心だと思うことがあって、それも思い込みではと。そういう当たり前を都度塗り替えられるので、現地の人と話す時間はなるべく作るようにしています。

“自分はどう思うか”を問い続けることがより大事に。

―コロナ禍で旅がしにくい時期もありました。また、今すぐ遠くにいけない人でも、日常で旅に出たような感覚を得るための方法はありますか?

旅に出る感覚って、日頃のタスクやルーティンから解放されて、自分がフラットな状態でいられて、新しい景色を見るから、同じことをしてても感じ方が違ったりしますよね。だから、いつもと違う道を歩いたり、知らない駅で降りたり、いつもの自分なら選ばないものを食べてみるのも良いと思います。ノープランで歩いていると、近所でも見たことのなかった景色に出会えたり、予想もしてなかったことが起きたり。その都度新鮮に感じたことに丁寧に向き合ってみる。なんでこれを見て嬉しく思ったんだろうとか、逆になんでここを歩いても楽しくないんだろうとか。いつも忙しくて考えないような小さなことでも、心を使って感じてみると、旅に出たような気持ちが味わえると思います。行き慣れた場所でもいつもとはちょっと違う格好、たとえばスーツを着たり、着物で出かけるのも非日常感が得られるし、いつもと違う自分として感じる何かがある気がします。スマホを置いて出かけるだけでも、いつも見過ごしてきた音や光を感じて、新鮮な感覚になれると思います。

―パンデミックを経験して、旅や移動に対する考え、価値観などでも変化はありましたか?

またいつ何が起きるかもわからないから、行ける時に行っておきたい気持ちは一層強くなりました。また、旅先でするような"価値観や当たり前が揺らぐ"ということを、パンデミックによって世界中の人が同時に体験しましたよね。日々どんどん状況が変わり、常識も変わっていく。一つの事象に対しても感じ方や捉え方は人それぞれだということもみんなで痛感した。だからこそ、自分はどう思うか、どうしたいのかということにしっかり向き合わないといけない時代になったと思います。常に自問自答することはとても大変な作業だけれど、それを丁寧にすることで納得した生き方ができるというか、自信がつくと思うし、他の人も尊重できるようになる。もし私と同じようにそう感じる人が世界中に増えているとしたら、また旅を重ねる中で色々な人の考えを聞いてみたいです。また、物事も捉え方次第だなと。何か起きても、暗い側面ばかり見て悲観的になるよりも、少しでもポジティブに捉えた方が健やかに過ごせる。制限のある生活では、自分の心の持っていき方を練習できたような気がします。アップデートした自分で、新しい旅に出て何を感じるかが楽しみです。

―では最後に。国内外さまざまな場所に出かけている青柳さんが旅に欠かせないアスレティアのアイテムを教えてください。

防腐剤や紫外線吸収剤、マイクロプラスチックフリーの「スキンプロテクション UVクリーム 30 N(SPF30 / PA+++)」はビーチフレンドリー処方※で海に入る時も抵抗なく使えるので重宝しています。持ち運びしやすい「アロマラッピング ハンドクリームセット」もマスト。荷物を少なくしたい時に便利です。あとは、香りが大好きな「トリートメント クレンジングオイル」。美しいボトルが滞在先の洗面台にあるだけで、毎日のスキンケアを丁寧にしようと思うし、洗面台の周りを常に整理整頓しようと思えます(笑)。あと、乳液の「コアバランス コンディショニングローション」はスクリュータイプではなくてプッシュ式なのもいいですよね。出過ぎないし、液漏れしない。移動が多い旅に最適だなと思います。

※一部の国・地域・ビーチの規制に配慮した設計

  • Text/Mariko Uramoto
  • Photo/Yui Sakai
  • Edit/Riku

プロフィール

青柳文子(あおやぎ ふみこ)

モデル・女優
独創的な世界観とセンスで同世代女性から支持を集め、雑誌、映画、ドラマ、CMなどに出演。映画や旅行についてコラムを執筆、商品プロデュースなど様々な分野で才能を発揮している。二児の母。2021年には母になり初めてのフォトエッセイ集『あか』を発売。

記事内で紹介された商品

スキンプロテクション UVクリーム 30 N(SPF30 / PA+++)

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