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2023.05.16

周りと比べてしまうあなたへ。ヨガインストラクター・三品茜さんに聞く「自分らしさを大切にする生き方」。

バレエの道からヨガの道へ転身した三品茜さん。ヨガのレッスンだけでなく、SNSなどを通じて、「自分らしくいること」の大切さを発信している三品さんは、過去に周りの人と比べてばかりいたからこそ、自分らしくいることの大切さに気付けたと言います。では、「自分らしさ」とはどうやって見つけられるのでしょうか?さまざまな環境での経験をお持ちの三品さんに自己を内観する方法や健やかな日々を送るためのメソッドを伺いました。

きっかけは“挫折”でした。

―バレエの道からヨガの道へ進まれた経緯を教えていただけますか?

2歳からバレエを始めて以来、踊ることが生活の中心で、将来はバレリーナになりたいと思っていました。中学生の時、国際コンクールに出たことをきっかけに、15歳でオランダの「Codarts Rotterdam(コダーツ ロッテルダム)」へ留学。希望に胸を膨らませていった留学先は今までとは全く違う環境で、だんだんバレエをするのが苦しくなり、挫折したんです。

―挫折というと?

日本にいるときは周りの人と比べて自分が一番であることや目立つこと、いい成績をおさめることなど、完璧でいることがいいことだと思っていましたが、人種も年齢も違う人たちの中で比べるものがなくなって、完璧が何かわからなくなってしまい、行き詰まってしまったんです。

また、幼心にもなんとなくアジア人差別を感じることもあり、弱いところは見せてはいけないと気持ちが張り詰めていました。日本にいるときは「強い子」「なんでもできる子」と思われていて、私自身弱音を吐くことを知りませんでした。そうやって抑え込んでいた感情が時々溢れて、心のコントロールがうまくいかなくなって。それまで持っていたバレエへの情熱も消えかかっているのがわかり、それに耐えられなくて逃げるようにして日本に帰ってきたんです。それが18歳の頃。後ろめたい気持ちもありましたし、周りの目を気にし過ぎていたこともあって、帰国してからもバレエを再開することはできませんでした。

―ヨガを始めたきっかけはなんでしたか?

ヨガは留学中に出会っていたのですが、当時はストレッチの一環としてやっていたんです。バレエの考え方が染み付いていたこともあり、当時はきれいなポーズをとることだけに集中していていました。今とは全然違うやり方でしたね。日本に帰国して運動量が減り、太りたくないという意識が強かったので、フィットネスクラブのヨガのクラスに通うようになりました。体型維持のためでもありましたし、他の人よりもちょっとできるということで、自分の欲求を満たそうとしたんだと思います。

―そこからヨガの向き合い方に変化が?

私が24歳ぐらいの時、母が過労で体を壊してしまって。私も母もアパレル会社に勤めていたのですが、「このまま私もハードな仕事が続けられるだろうか」と考えるようになり、手に職をつけようと思いました。この先、何ができるかと考えた時、ヨガは長年ストレスなく続けていたので、私に合っているのではと思い、インストラクターの資格を取ることにしたんです。勉強を始めたら、今まで知らなかったヨガの哲学や歴史に触れて、その時初めて自分に必要なパーツが詰まっていると感じました。

─必要なパーツとは?

レッスンを受けていた先生から「ヨガで大切なのは人と比べることではなく、自分のペースを保つこと。それを導いてくれるのは呼吸」と教わったんです。それまではきれいなポーズを取ることに必死でしたが、呼吸をし、自分のペースを保つことこそが大事だったんだと。周りと比べすぎて、バレエを挫折してしまった過去の自分に足りないものがここにあると気づきました。

私たちは自分のことがよくわからなくなっている。

―三品さんがヨガレッスンの際に大事にしていることはなんですか?

自分に意識を向けることです。スタジオには周りに人もいますし、物音もしますし、集中力を妨げる要素がたくさんあります。でも、こういう環境で自分に意識を向ける訓練をするとマットの外でも自分を見てあげられるようになります。自分自身に意識を向けるということは、誰かと比べたりせず、自分は何をしたいのか、深掘りできるということです。

赤ちゃんの時は誰かと比べず、自分が持っているエネルギーをすべて自分に使いますよね。でも、成長して外の情報に触れるうちに、自分だけに集中することがだんだん少なくなってしまう。すると、自分のことがよくわからなくなってしまいます。ヨガはポーズと呼吸と合わせて瞑想も大事な要素なのですが、メディテーションすることで、赤ちゃんの時のように自分だけに意識を集中させることができます。

―三品さんが生きる上で大事にしていることはなんですか?

「自分らしくいること」です。人と比べたり、競争することが決して悪いこととは思いません。ただ、私はその時間が人よりも長すぎました。今思えばバレエもそうですし、アパレル時代も売上や人気の順位など常に数字を意識せざるを得ない環境にいたと思います。人より上手であることや流行のものを身につけていれば、安心できたけれど、その世界から離れてみたら、自分は何が好きで、何が楽しいのかわからなくなっていました。ヨガを続けて自分にフォーカスすることで、自分らしさとは何かがわかるようになり、そうすると、以前より健やかな状態でいられると気づいたんです。

「○○さんみたいになりたい」と思って誰かの真似ばかりし続ければ自分はいなくなってしまう。自分が自分でいなかったら、本当の自分はいなくなります。レッスンの時も、「周りの人が足を上げているから私もがんばって上げなきゃ」と思い始めたら、「それはあなたのヨガではないですよ」と伝えています。自分の骨格に合わせた動きやポーズ、気持ちいい感覚に合わせてやるのが、本来のヨガだからです。

―自分に意識を向けることで、何が心地いいのか、何がしたいのかがクリアになる?

そう思います。仕事に関しても何をしたいのか私の中の軸が定まると、自然と必要なことが引き寄せられました。「これは本当に自分のやりたいことなんだろうか?」と立ち止まって考えることも減り、今はストレスがないんです。もちろん背伸びして、苦手なことでもやり続ければ成長につながるかもしれませんが、今の私は無理をすることが合わないので、自分にマッチすることを優先的に選ぶようにしています。

自分のことがわかっていたら、大きな壁にぶつかっても大丈夫

―三品さんはファスティングも指導されていますよね。

ファスティングは痩せるためにやるものだと思われがちですが、私は本来の自分に戻れるツールの一つでもあると思っています。物が溢れた時代に生きていると、お腹が減ってないのに食べたり、娯楽で食べたりして、本来の必要な食事からかけ離れやすい。便利な食品には保存料や化学調味料もたくさん入っています。そういう不要なものが蓄積した体をリセットするのがファスティングの目的です。ファスティングをすると、自分の体はどんな栄養を欲しているのか、どのぐらいでお腹いっぱいになるのかに気付くことができます。

食に関心の高い人ほど誤った情報に振り回されがちです。だから、まずはその情報を手放すことが必要。私は季節の変わり目に一度やっていますが、冬はジュースだと体が冷えるので甘酒を使ったり、生姜や適したスパイスを入れるなど、季節と体の状態に合わせてメニューを変えています。これも自分のことをちゃんと知っておくことが重要なんですね。自分が自分のお医者さんになったように客観的に必要なものがわかるようになると考えています。

―強いストレスを感じたり、「今、自分は弱ってるな」と感じたら、どうやって乗り越えますか?

食べることや自然の中にいることが好きなので、それをできる限りバランス良く生活に取り入れるようにします。忙しい時こそ味の濃いものを食べたくなりますが、その後の体の倦怠感や気持ちが沈むことも知っているので、暴飲暴食も自然と抑えられています。あとはたくさん寝ること。アスレティアの「デュアルエッセンス ボディオイル」でマッサージして寝るのが好きですね。深い安らぎを感じられる香りが気に入っていて、しっとりするのにベタつかず、寝具にオイルがつく心配もないです。あと、やはりヨガも欠かせないです。もし今後、なかなか自分の時間が取れなくなっても、5分だけでも目を瞑って呼吸して、ヨガを取り入れるだろうなと思います。

―目を瞑るだけでもヨガなのですか?

はい。ヨガはポーズを取ることだけが目的ではなく、自分自身に意識を向けることが大事なので。私自身ようやく、ヨガを続けている意味がわかってきました。それはやっぱり自分らしくいることがどれだけ大切かに気づいたからだと思います。自分が何をしたいのかがわかっていたら、この先何か大きな壁にぶつかっても深く悩むことはないんだろうと思います。そして、自分に意識を向け、自分に必要なことをすると満たされる。逆に、そういう状態でないと、人に何かをしてあげられる余裕は生まれないし、相手も躊躇しちゃうと思うんですよね。だから、いつも満たされた状態である人でいたいなと思っています。

1日を心地よく過ごすための3つのメソッド

最後に三品さんにビギナーもできるヨガのポーズを3つ教えてもらいました。「ヨガの前は『スイッチング アロマルームミスト N』をシュッと一吹きすることもあります。山頂から見える澄んだ空気をイメージした『AT THE TOP』は情景が浮かぶような香りが心地よく、自然と呼吸が深くなります」と三品さん。

心地よい目覚めを促す「太陽礼拝(スーリヤ・ナマスカーラ)」

全身の筋肉を動かすことでエネルギーを生み、すっきりとした感覚が得られて、1日を元気に過ごすための準備ができる。

  1. 1.背筋を伸ばし頭から爪先まで一直線になるように立つ。
  2. 2.額の斜め上で両手を拝むように合わせ、息を吸いながらそのまま両手を天井に向かって伸ばす。
  3. 3.息を吐きながら両手を下ろし、ゆっくりと床につける。
  4. 4.息を吸いながら左足に重心を移し、体重をかけつつ、右足を後ろに伸ばす。両腕は体の左右に置く。
  5. 5.息を吐きながら左足を後方に伸ばす。両手を床についてしっかりと体を支え両足を揃える。
  6. 6.息を吸い、吐きながら膝を床に近づける。
  7. 7.息を吸いながら、足を後ろに伸ばしていく。それと同時に上半身を起こす。視線は正面の遠くへ。
  8. 8.息を吐きながら手と足の裏を床につき、お尻を高く上げる。
  9. 9.息を吸いながら右足に重心を移し、体重をかけつつ、左足を後ろに伸ばす。
  10. 10.後ろに弾いた左足を前に戻しながら、両足を揃える。
  11. 11.息を吸いながら背筋を伸ばす。
  12. 12.最後は両手を下ろしながら体の横で揃えまっすぐ立つ。

頭と体をリフレッシュする「ウサギのポーズ(シャシャンカ・アサーナ)」

ウサギの姿勢を真似たポーズ。仕事や家事で凝り固まった頭を刺激し、脳を活性化しリフレッシュ。眼精疲労や肩こりも軽減してくれる。

  1. 1.正座になり、上体を前に倒し、腕を前に伸ばす。
  2. 2.両手でかかとを掴む。難しい場合は肩の下に手を置く。
  3. 3.頭のてっぺんを床につけ、ゆっくりお尻を持ちあげる。肩甲骨を広げ、つむじをマッサージするように頭に重心をかける。
  4. 4.腕を前へ伸ばし、肩の力を抜いて首の後ろをリラックス。一呼吸おいて、ゆっくり頭を上げながら上体を起こす。

心地よい眠りへ導く「片鼻呼吸法(ナーディショーダナ)」

浅くなった呼吸が深くなり、気持ちがスッと落ち着く方法。初心者の方は胸に手を当てて呼吸するだけでもいい。

  1. 1.右手の人差し指と中指を曲げて、親指を右の鼻を閉じるように押し、左の鼻で息を吸い込む。
  2. 2.吸い切ったら、左の鼻も薬指で押さえて、両穴を閉じ、息を止める。
  3. 3.親指を離し、右の鼻からゆっくり息を吐く。そのまま右の鼻で息を吸い込む。
  4. 4.吸い切ったら、右の鼻も親指で押さえて、再度両穴を押さえて息を止める。
  5. 5.薬指を話し、左の鼻花でゆっくりと息を吐きだす。このサイクルを繰り返す。「ゆっくり息を吐くのがポイント。ただし苦しくなりすぎない程度に」。
  • Text/Mariko Uramoto
  • Photo/Yui Sakai
  • Edit/Riku

プロフィール

三品茜(みしな あかね)

ヨガ講師
15歳でローザンヌ国際バレエコンクール出場。
Yogini vol.79表紙の抜擢を機にヨガウェアモデルなどを担当。MARINE YOGAやオーガニックライフ東京等に出演。自主開催イベントではマインドフルネスとハイキングや農業体験といった”静と動と食”を組み合わせたイベントなどを都心や地方でも主催。MAGARIGAWACLUBではstudio監修なども行う。
美しい姿勢とナチュラルな立ち振る舞い、ヘルシーな思考からくる生活が人気。様々な手段と選択で本来の自分を取り戻し、自分らしく健やかに過ごすことを大切に伝えている。

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