Inspiration

2023.02.08

視点を増やし、自分は自由だと信じる。コムアイ流メンタルケアの心得

歌手・アーティストのみならずますますパフォーマンスの幅を広げているコムアイさん。心のおもむくまま生きているように見えるコムアイさんの生活には、豊かな想像力で心を健やかに保つヒントが散りばめられていました。そんなコムアイさんに自身の考えるメンタルヘルスについて語ってもらいます。

自分探しの旅に出た1年

─水曜日のカンパネラを卒業されて一年が経ちましたが、最近はどのような活動をされているんですか?

あまり生活は変わっていませんが、パフォーマンスはもっと実験的になっているかもしれません。毎回新しいことに挑戦していて、音楽も踊りもある即興が多めのパフォーマンスの他にお芝居をしたり、インスタレーションを作ったりしています。自分が良いと思っていることや伝えたいことの軸が整理できた気がしますね。

コムアイさんが踊る鹿踊(Photo by 三田村 亮)

ここ1年で一番楽しかったのは、岩手県の遠野に伝わっている郷土芸能の鹿踊(ししおどり)を習い始めたこと。もともと能などの伝統芸能や、地域で受け継がれている神楽などの民俗芸能を観に行くことがすごく好きだったんですけど、師匠や団体の方々が受け入れてくださったおかげで習い始めて一ヶ月後にイベントで踊ることになり、本番があるおかげでたくさん練習しました。踊りを習得しながら、発見の連続で。踊りの中で「山や自然の美しさと人間の関係」みたいなものを感じながら、命は取られないけれど目の前で獣が襲ってくる感覚もあったりして、恐怖もあるし幸せでもある……そんなことを楽しんでいます。

この地球にはたくさんの世界がある。世界を飛び越えて得る安心感

─コムアイさんは自由に活動されているイメージがありますが、メンタルが優れないときはありますか?

全然あります。私にとって調子が良いときは、パフォーマンスしたり、仕事が忙しかったり移動しているとき。調子が悪いときはちょっと自分の動きが遅いみたいな感じかな。ただ、メンタルヘルスの調子を考えたらずっと外に出ているほうが良いのだけれど、しんどい時のほうが成長したり、粘り強くなったりする瞬間だよなって最近は思っています。「ハレとケ」という言葉がありますが、両方ともないといけないと考えていて。ハレの日─お祭りのような特別な日は毎日来ません。ふだんのケの日は地味に過ごしているけれど、でもその間私たちは理想の瞬間を想像しながらすごく大事なエネルギーを溜めている気がします。だからこそ「今日があってよかった!」と思える日を迎えられる。悩んでいるときも無駄ではなくて、後でふりかえったときに、あのもやもやした日々のおかげで今があると思えたり、早く目的にたどり着こうとしてできなくても、とても意味があることもあります。

─メンタルの調子が良くないと感じたときはどのようにされていますか?

明らかに調子が悪いと思うときは環境を変えるかもしれません。どこかへ行ったり外で作業したり。あとは普通に部屋が片付いたら調子良くなったりしますね。大きく人生を変化させたい時には、たとえば、1ヶ月間休みを取って旅に出ます。とりあえず民泊を探して、何日か予約しておいてその場所に行く。もしそこにもっといたくなったら居たら良いし、ちょっと違うなと思ったら次のところに変える。そうするうちにどこかに連れて行ってくれる人もいたりして、新しい世界を知ることができるし、自分のそれまでの人生も客観視できます。ただ、1人で行くのが絶対良いと思います。

─コムアイさんにとって、外の世界に出ていくことが一種のメンタルヘルスなんですね。

難しいのが、休めばメンタルが良くなるかというと私はそうではないんです。頑張りたい時は頑張った方が気持ちがいいですね。ただ、どうしたら良いのかもわからなくなっちゃったときにおすすめなのは書くことです。とりあえず思いつくことから書いてみると、最初は感情的なものが出てきて、だんだん皮が剥けるように考えの核心に近づいていきます。友達として自分のことを見ることができて、「こんなことで真面目に悩んでてかわいいな」と思ったりします。書いていくと「大丈夫だよ。こういう風にしてみたらいいんじゃない?」って、友達としての処方箋が自分に出せるのでおすすめです。

─コムアイさんのように外に出て活動していると他者からの評価を受けることもあると思います。そういった評価とはどのように向き合っていますか?

この地球には無数の玉みたいな世界があると感じています。自分が感じ取っている世界が全てのように感じるかもしれないけれど、自分が世界を移動したとき、例えば学校を卒業したときに、世界が変わってびっくりしたことはありませんか? だから評価なんて小さな玉の中のある一定の人々の価値観によるもの。水曜日のカンパネラを辞めてすごく思いますが、仕事で会う人たちが変わって、今も東京にいるんですが別の世界にいるような気分です。東京ですらいっぱい世界があるから、どこかからどこかにジャンプしたら、新しく心地よい世界が待っていて、出逢いもたくさんあるので安心してチャレンジしたらいいと思います。ひとつの世界に依存すると不安になったり、孤独に悩んだりするかもしれないけれど、依存先がいっぱいあったらなんとかなる。

コムアイさんのセルフケアルーティーン

─コムアイさんがセルフケアのために普段されていることはありますか?

撮影やお芝居でがんばって疲れたときは、お風呂にエプソムソルトを入れて、ティーツリーやヒノキなど木の匂いのエッセンシャルオイルを垂らして、暗めの照明で本を読んだりしながらしばらく浸かっています。あと、家で落ち着いた時間を過ごすプレイリストを20曲くらい選んで聞くことが気に入っています。プレイリストはInstagramのハイライトにまとめてあります。疲れているときや迷っているときは、無理やり気分を上げずにむしろじわじわと沈んでいく心地よさを楽しんでいますね。

─アスレティアのルームミストを使っていただいていると伺ったんですが、どのような時に使われていますか?

部屋の空気が淀んだときに窓を開けて風を通すのが好きなんですが、冬はあまり換気ができなくてアスレティアのアロマルームミストN のAT THE TOPをよく使っています。空気がもやもやするときなどに使用するとみずみずしさを感じて日常的に気持ちをリフレッシュしています。ホテルにも持って行きますね。
香りが飽きないし、あらゆるシーンでも邪魔しないところも好きです。また、アスレティアの商品は全部ジェンダーレスなので、あまりガーリーなものを置きたいと思わない私みたいなタイプに合っていると思いますし、人にもプレゼントしています。

自分の選択が放つパワーを信じる

─最後にコムアイさんが自分のメンタルを良く保つために一番大事だと思うことを教えてください。

自分は自由なんだって言い聞かせることですね。たくさんの制約があるけれど、それらを守るかどうかっていう自分の選択は自由。制約と選択を別に考えることが大事だと思います。もちろん空を飛べないとか物理的に不可能なことはあるけれど、「そういう条件のある世の中で、あなたは何を選択しますか?」という問いがあって、実はそこにすごく自由があることを忘れないようにしています。選択肢が増えて選べる感じがするとめちゃくちゃメンタルに良いです。

─生きていると自由を感じられないときもあると思いますが、どのように付き合っていますか?

どうしたら自分が満足できるかということを考えますね。もっと頑張らなきゃいけないかもしれないし、工夫が必要かもしれない、あるいは今回は最低限の労力で切り抜けるしかないかもしれない。でも、「自分がこれを選んだんだ」って思うと意地みたいなパワーが出てくる気がしませんか? 守らされている締切より、守ってやるか! と自分で「選択」した締切のほうが頑張れる。忙しいとわからなくなってしまうけれど、「選択の自由があるんだぞ」といつも思いながら取り組むようにしていますね。

  • Text/Shihoko Nakao
  • Photo/Jeremy Benkemoun
  • Edit/RIKU

プロフィール

KOM_I(コムアイ)

声と身体を主に用いて表現活動を行なっているアーティスト。日本の郷土芸能や北インドの古典音楽に影響を受けている。主な作品に、屋久島からインスピレーションを得てオオルタイチと制作したアルバム『YAKUSHIMA TREASURE』や、奈良県明日香村の石舞台古墳でのパフォーマンス『石室古墳に巣ごもる夢』、東京都現代美術館でのクリスチャン・マークレーのグラフィック・スコア『No!』のソロパフォーマンスなど。水にまつわる課題を学び広告する部活動『HYPE FREE WATER』をビジュアルアーティストの村田実莉と立ち上げる。NHK『雨の日』、Netflix『Followers』などに出演し、俳優としても活動する。音楽ユニット・水曜日のカンパネラの初代ボーカル。

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