Inspiration

2022.07.08

自分がハッピーになることで他者への愛もあふれる。小松原美里・尊が考えるヘルシーな人生

北京オリンピックに日本代表として出場したフィギュアスケート、アイスダンス選手の小松原美里(こまつばら みさと)さんと小松原尊(こまつばら たける)さんは、2017年には法的に婚姻関係を結び、公私ともにパートナーとなった。コロナ禍を経てオリンピック出場と、目まぐるしく変化していく社会や環境のなかで、自分自身やふたりの関係性をヘルシーに築いていくために大切にしていることを伺いました。

お互いを理解するためのスペース

─ 公私ともにパートナー関係を築くおふたり。心地のいい距離感を形成するために意識していることはありますか?

小松原美里(以下、美里):ふたりとも意識をして話をしたり、相手の話を聞いたりと、コミュニケーションをとることをとても大切にしています。結婚したてのころや、一緒に滑り始めた時は24時間毎日ずっと一緒にいようと思ったらいられるスケジュールだったんです。だけど、私には自分のスペースが必要だということをティム(尊さん)が教えてくれて、自分でもだんだんと理解していって。「嫌いとかじゃなくて、自分のスペースが欲しい」と誰に対しても伝えるようにしたんです。そうしたら、そのことを尊重してくれて、ひとりの時間を作れるようになりました。そのおかげで、とてもストレスフリーだし、ふたりで過ごす時もリセットされた状態で接せられるようになったんです。

小松原尊(以下、尊):最初はすごく難しかった。自分が何かしちゃったんじゃないかって思うことがよくあったけど、ふたりでしっかり話したら自分のミスではないと気づいて。人間だから、自分のスペースを必要とするのは当然だし、お互いそれが分かってきてから、仕事の関係性もすごくよくなっていきました。仕事でよいパフォーマンスを出したいので、「今日はこういう気持ちなんだ」「今日は2時間くらい歩きたい」というように、自分の状態をお互いに伝えあうようにしています。

美里:最近ひとりの時間でやっているのは、土の上に裸足で立ったり、小さな風呂敷を広げて寝っ転がったりすること。公園だとちょっと変な人に見られているかもしれないけど(笑)、子どもの声や、風や葉っぱの音を聴いて、「気持ちいい〜」ってなるのが好きです。これはアーシング(*1)と呼ばれるんですけど、私はオリジナリティを加え過ぎているかも(笑)。でも、自分の存在を感じられるし、結果的にデジタルデトックスにもなっています。私たちは仕事上、人と接することが多くて、それも大好きなんですけど、どうしても自分に立ち返る時間が減ってしまったんです。でも自分の状態を知らないと、自分を大切にもできないし、自分を大切にできなかったら人のことも大切にしてあげられないと思っています。

尊:自分は音楽を聴きながら散歩をしたり、買い物したりしています。小説を書くことも大好きですし、たまにパソコンを持って出て日記を書いたりも。アメリカで育ったけれど、日本で暮らしていますし、仕事で海外にもよく行くとなると自分の気持ちを取り戻したいなって思うときがあるんです。そんな時は音楽を聴いて、自分の存在や気持ちを再認識しています。

人間はそこまで複雑ではない。自分のための小さな約束

─ プライベートな時間とアスリートとして活動する時間、それぞれどういう自分でいますか?

美里:氷の上ではしっかり喧嘩します。意見交換が活発といういい方もできるけど、私たちは約20年間滑っているアスリート同士なので、それぞれの選手像を共有したり、そこにたどり着くにはどうすることが一番かなどを話す時に意見がぶつかります。だけど、それもすごく大切にしていて。ぶつかるけど、それは上手くなりたいからなんです。でも、それを「氷の外」でもやってしまうと多分ふたりとも疲弊しちゃう。なので、オンオフをしっかり分けていますね。

尊:自分もプライベートの時間と仕事の時間は分けたほうがよいと思っています。お互いに成長したいので、「これはちょっとよくないな」「一緒に滑ってる感じがない」とか、そういう話を氷の上ではするようにしています。

─ オンオフはリンクを出入りするとすぐ切り替わるのでしょうか?それとも何か儀式的なものはありますか?

美里:​​私はウォームアップをしている段階で、モードを構築するところが結構あって。たとえば、メイクも自分のなかでスイッチを押すような感覚があるんです。大会の時ってバチバチにメイクしてモードに入っていくんですけど、その感じが好きだし、それがよい切り替えになっていますね。それと、嗅覚も大切な五感のひとつなので、好きな香りをメイク前に嗅いだりします。

尊:自分はプライベートの時にスキンケアをして、リラックスできる状態を作るようにしています。この2年、家にいることが多かったのでスキンケアを始めるようになりました。知識がないからどうやってやればよいだろうって思っていたけど、歳を重ねるにつれて、からだの中で最大の器官である肌は、からだの他の部分と同じようによく手入れされるべきだと感じ始めたんです。男性だとなかなかスキンケアを始めたり、続けることに対してハードルを感じている人もいるかもしれないのですが、自分の肌タイプを知ったり、どういう物が必要なのかを調べることは、時間はかかりますが大切だと思います。もっと多くの男性がスキンケアや化粧品に慣れてみてほしいし、心地よいと思ってくれるとよいですね。
オンオフの切り替えでいうと、自分は音楽でスイッチングするんです。リンクの上では、Charli XCX、NCT U、AnittaやJO1などのアップテンポでテンションが上がるような曲を聴いています。反対にオフの時はリラックスしたスローテンポな曲を聴くことが多いです。最近では宇多田ヒカル、Rosalia、 Oklou、昔のファイナルファンタジーのサントラが好きですね。

─ 香りやスキンケアで自分を取り戻したり、切り替えたりしているんですね。アスレティアのプロダクトを取り入れることはありますか?

美里:スイッチングアロマルームミストのSacred Treeを使うと、地に足をつけ、志高く自分の軸をシュッと取り戻す感覚があります。中身だけでなく容器も環境に配慮されているのはとても推せますね。

尊:私の肌は油分が多いので、ベタついたり、ウェットになることがあります。そのままリンクに向かうと、顔がどんどん重くなってしまうのですが、コアバランスオイルはとてもフレッシュで軽く、すぐ肌に馴染んで、ベタついたりウェットになるのを防いでくれるんです。今まで悩んでいたことがクリアになり、スキンケアが楽しいことに気づきました。

─ プライベートで嫌なことがあるとお仕事のパフォーマンスが落ちてしまうこともあると思うのですが、おふたりはプライベートとお仕事が影響しあうことはありますか?

美里:あるし、それをうまく利用できれば美しいと思っています。もちろんよい時はよく影響するからいいんですけど、私たちはふたりだから、しんどい時にはシェアすることができる。

尊:お互いにしんどいことはシェアしないと、うまく仕事ができないと思います。そういう関係性にたどり着くことは難しいかもしれないけど、うまくいけば支えあえるはずです。

美里:それと私はメンタルトレーニングも受けていて。すぐできることとして、「自分の小さな幸せを決めておき、それを実践する」ということをしています。たとえば私はコーヒーが大好きなので、「コーヒー飲んだらハッピー!」って脳に教えていくんです。意識して自分が嬉しいことをすると、すぐに幸せであることを認識できるんですよ。「今日ネイルかわいい〜」とかでもいいし。

尊:人間はそこまで複雑ではないと思うんです。うまくいったらこれをしようとか、自分が嬉しくなる小さな約束をすることは大切ですね。

自ら生み出すラブと、外から得るラブ

─ YouTube活動を始められたり、尊さんは日本に帰化されたりと環境の変化があったと思います。自分の心身の健康を保つために大切にしていることは何かありますか?

美里:私はどんどんハッピーを伝えたい人なんですけど、自分が幸せじゃないとエネルギーが持たない。でも、よいことやハッピーは大量で無料で尽きないもののはず。それに気づいてからは、自分にとって幸せなことをたくさんしようと思うようになりました。そうしていると、自分だけじゃなくて他者や、動物、地球にも目を向けられるようになり、目まぐるしく変化していく環境のなかでも、柔軟に対応できるようになったんです。

尊:最近では戦争が始まってしまったこともあり、「人間ってどういうものだっけ」ということをよく考えています。人間はそんなに違わない。それぞれの考え方や意見の違いはあるけれど、それ以外はそんなに変わらない。地球環境に関しても、10年くらい前にPlanet Earthのドキュメンタリーを観てから、地球を大切にしたいと思い始めました。自分が選手としてどれだけのことをできるかは分からないですけど、自分の人生だけじゃなく、みんなと一緒に過ごしていこうという想いが大事。フィギュアスケートも地球のことを考えると、難しい状況になっていると思います。氷は冷やし続けないといけないから、大量のCO2排出が問題視されていて、長く続くスポーツではないと思う。だからこそ、自分たちもいろんなメッセージを演技を通して伝えたいなと思っています。

─ アイスリンクが地球環境によい影響を与えていないという現状に対して、おふたりも葛藤されていると思います。そうした葛藤や矛盾との向きあい方はどうされていますか?

美里:すごく難しい現状だからこそ、できるところをやればいいんじゃないかな。たぶん一個人にできることって、人それぞれシチュエーションが違って。私の場合は氷を使っちゃうけど、お肉を食べないようにするとか。それぞれにできることしか結局はできない。だから、その幅を少しずつ広げていけたらいいのかなって思います。確かにジレンマもあるから、これからも向きあい方を探さないといけない。それは対話していくなかで見つかることもあるだろうから、私もいろんな人に話を聞きたいなって思っています。

尊:社会や環境に配慮しながらも、自分の選択を大切にしていてもよいと思う。みんなそれぞれができるところで守っていこうねっていう気持ちです。

─ 矛盾や葛藤と向きあいながら、自分の選択を許していくこともセルフラブの一環ですね。セルフラブってひとりで生み出すのって大変だと思っているのですが、おふたりはお互いの心身をどうケアしあっていると思いますか?

尊:自分のことを話すのも大切だけど、それよりも聞く練習をするようにしています。性別においても、男性がいつも話して、女性がいつも聞くというパターンがすごく多い。それに気づいた時にすごく嫌だなと感じました。意識して聞くようにしたら気づきも増えたし、今では自分の意見をいうことよりも、いろんな意見を聞きたいと思っています。

美里:私は海外に行くまでは自分から発言するのが苦手でした。だけど、発言しないと考えていることはまったく伝わらないし、自分の普通は相手にとっては全然普通じゃないことに気がつきました。意見をいわないと、ふたりでよい方向には進めないということを経験したんです。聞いてほしいんだっていったら聞いてくれるし、自分もそれをできるようにしたいです。

尊:日本ではみんなが「大丈夫?」って聞いてくれるけど、よくその言葉を使うから意味がなくなってきている。「本当に大丈夫?」と心から聞けたり、「大丈夫じゃない」って安心していえる場所を作っていきたいですね。

美里:セルフラブでもうひとつ。私、怪我で脳震盪を起こした影響で鬱になって、自分から何もいえない時期があったんです。ちょっと死にたいなって思ってしまった時に、電車でたまたま席を譲ったら「ありがとう」といわれて、それがすごく嬉しかったんです。自分にやさしくするだけじゃなく、人にやさしい行動をして感謝されることですごく幸せになれると感じました。自分から助けを求めることも大切だけど、そんな風にどんどんやさしいことをして感謝されることも大切なんじゃないかな。生み出すだけだと苦しいから、外から得られるラブも積極的にゲットしていきたいなと思っています。

(*1) アーシングとは、「裸足になって直接大地に触れる」というカリフォルニア発祥の健康法。血流改善作用、自律神経のバランスを整えるなど、心身にとってさまざまな効能・効果があるといわれている。

Text/Kotetsu Nakazato
Photo/Yui Sakai
Edit/Yuri Abo(REING)

プロフィール

小松原組

フィギュアスケート、アイスダンス選手。
2022年2月北京五輪代表、団体銅メダル獲得。全日本4連覇。
2016年にカップルを結成し、わずか3年で全日本選手権を優勝、日本を代表するカップルに。
プライベートでは2017年に結婚し、2020年にはティム(小松原尊)が日本国籍を取得。
2022北京五輪を終えた今、ちょうど結成10年となる「2026年ミラノ五輪で日本代表カップルとして最高のパフォーマンスを。」をテーマに、自分たちのスケートや生き方を通じてこれからも周囲の輪を広げていきたいと考えている。

小松原美里

1992年7月28日生まれ。岡山県出身、フィギュアスケート、アイスダンス選手。
イタリア代表として活動の後、2016年に尊と出会いカップルを結成。私生活ではヴィーガンを取り入れ、地球や環境にやさしい生活を心掛けている。

小松原尊

1991年6月17日生まれ。アメリカ合衆国出身、フィギュアスケート、アイスダンス選手。
韓国やノルウェーでの競技生活を経て、2016年に美里と出会いカップルを結成。
インタビューにも日本語で答えることを徹底し、日ごとに上達する日本語での受け答えにファンも驚かされる。私生活ではグルテンフリーを取り入れつつ、美里と共に環境にやさしい生活を心がけている。

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